優しさ
今日の稽古は、馬渕英里何さんと出演三回目の吉本菜穂子さんのシーンから始まりました。お二人は演出に着々と応えていき稽古は順調に進んでいましたが、ふと、吉本さんの履いてる稽古着ズボンが10分前よりも下にずれていることに気付きました。しかし、「ヒップで履くのが吉本さんなりのオシャレなのかもしれない」と思い黙っていました。が、吉本さんが動くにつれて徐々にズボンはずり落ちていきます。それでも私は「衣服のルーズさを楽しんでいるのかもしれない」と気を回し触れないでおきました。
その後もズボンはずり落ち続け、かろうじてお尻のふくらみに引っ掛かって安定したのもつかの間、「あっ!」となる所まで最終的にずり落ちきりました。
聞けば私以外にもみんな本人に言おうか言うまいか迷っていたらしいです。でも大人としての距離感を測ってしまったのだろうね。結果、誰一人指摘しなかった。
そういえば以前、初対面の役者がズボンのチャック全開で稽古してて、みんな気付いてるんだけど「指摘することで逆に恥をかかせちゃうかも」みたいに遠慮して全開のチャックを放置し続けたことがありました。今思うとその方が残酷だよな。
優しさって難しい。
顔合わせ
稽古場に一番乗りして机や椅子の準備をしていると、二番目にやって来た馬渕英里何さんがさり気無く手伝ってくれました。ひっそりとした地下の稽古場で、馬渕英里何さんと二人、ガチャガチャと音させて椅子運びです。美人が労働。ドキドキしちゃいました。
その後、時と共に役者や関係者がぞくぞくと集まってきました。「ご挨拶遅れまして(名刺交換)」といった社交に慣れた挨拶がそこここで交わされ、稽古場に薄い緊張が漂う中で読み合わせが始まりました。本谷有希子は利き手の左手を終始動かしています。肘から先を45度の角度で振っているのです。どうやらセリフのタイミングと連動しているようです。しかし、ペンを握っているのでたまに刺さるんです、左隣の私に。この人と食事に行くと箸も刺してきます。
読み合わせ後、台本の説明を軽く行いました。キーワードは「暗い」です。